その昔、対なる力を持つ二人の魔族がいた。
一人は自由をこよなく愛し、束縛を何よりも嫌った。
もう一人は、魔族の中で唯一「理」を知り、秩序を守ることを良しとした。
彼らは何を求めることもなく、誰を恨むこともなく、ただ生を全うしていた。
世界に絶望した、あの戦いのときまで。

 絶望に堕ちたその日、二人の魔族は二つの選択を迫られる。
このまま戦争の勝利のために力を奮うか否か。
前者は生なれど隷属なる道。後者は裏切り者の烙印を押されて処刑される末路。
疲れ果てた二人は、そのどちらをも選ぶ気力も残っていなかった。

 その決断はあっけなく下された。
自由を愛する魔族は、自らその命を絶つことで己の力が利用されることを拒んだ。
誰もが予想していなかった出来事に魔族たちは混乱に陥った。
対なる魔族はその混乱に乗じて姿を消した。
それっきり行方知らず。そのまま二人の魔族は歴史から姿を消した。


 

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